マロンクリーム
好きな人がいました。
それはそれは好きでした。
離れ離れになって、楽しいだけじゃなくなって、嫌なところも見えてきて、いつの間にか好きがどこかへ行ってしまいました。
好きだった人はわたしのことを大変大事にしてくれました。
でも、わたしは大事にできませんでした。
ひどいことをたくさんしました。
ひどいことをたくさん言いました。
それでも好きだった人はわたしのことを大好きだと言いました。
別の好きな人ができました。
でも、別の好きな人には婚約者がいました。
大事にされてると思っていました。
好きでした。
好きってたくさん言われました。
好きだった人のことなんてこれっぽっちも頭にありませんでした。
でもまた離れ離れになって、今度は別の好きな人の好きがどこかへ行ってしまいました。
わたしだけが好きでした。
好きだった人は、相変わらずわたしを好きと言ってくれました。
わたしは、ひどいことをたくさん言いました。
あなたと離れてる間に、好きな男の人がいたのよ、と。
抱き合った話もしました。
好きだった人は泣いていました。
そのあとは楽しくおしゃべりをしてバイバイをしました。
その日からです。
その日から、好きだった人が、また好きな人になりつつありました。
でも好きな人はなんだかよそよそしい雰囲気でした。
ある日、わたしは勇気をだして言いました。
やっぱり好き、付き合おう、と。
好きな人は言いました。
ごめん、彼女ができた。彼女のことが好き、と。
当たり前のことでした。
長い時間、ひどいことを言って、気持ちに応えないで、フラフラして、それで付き合おうだなんてなんて虫が良すぎるんだ。
でも、わたしは好きな人のことが、好きでした。
泣いていると、好きな人も泣きながら言いました。
好き。嫌いになれるわけないじゃん、と。
彼女と別れる。
好きな人は言いました。
でも約束の日になっても別れていませんでした。
また約束の日になっても別れていませんでした。
また約束の日になっても別れていませんでした。
会えるのなら、からだだけでも良いと思いました。
わたしが昔していたことと、同じことをされました。
からだだけ、つまみぐいをしていたのです。
当然の報いだって思いました。
触れられるのならいいと思いました。
わたしのことを好きなのなら、いいと思いました。
彼女になれないなら会わない、何度言ったことでしょう。
好きだから、我慢なりませんでした。
彼女とのことははっきりしないまま、長い間辛い思いをしました。
でも、同じ思いをさせていたんだなって、
自業自得だなって、思いました。
会うともらえる好きだっていう言葉と、会うともらえる好きな人の涙だけを信じていました。
わたしのことを好きだと言ってくれる他の人たちを、都合良く使いました。
反省してもしきれませんでした。
好きでいるだけで見返りなんていらない、そう思った矢先でした。
好きな人が女の子をおもちかえりしたのを見た人の話を聞きました。
その女の子の写真を見ました。
お世辞にも可愛いと言えなくて、
わたしは可愛くなろうと頑張っているのに、
この人はこんな女の子と抱き合っているんだな、
そう思ったら視界がすっと開けました。
わたし、何をしていたんだろう、と。
大好きだったけど、このひとじゃなかったんだなと思いました。
きっともっと誠実で素敵な人に出会いたいと思いました。
連絡はもうしません。
でも、彼女に全てがバレて捨てられてしまったのなら、
わたしだけでも味方してあげられたらなあ、なんて
甘いことを思ったりしています。
1年間、幸せなこと、辛いこと、嫌なこと、悲しいこと、楽しいこと、胸が潰れそうなこと、たくさんありました。
全部、全部、長い夢だったんだなあ。
ありがとう。
もう、好きな人のことは、見ないことにします。
君のために近くに引っ越してきたけど、もう引き上げなきゃな。
初めてキスしたときのドキドキ、一生忘れません。
初めて抱き合ったときの幸せ、一生忘れません。
毎日のように夜中に会ったこと、一生忘れません。
彼女と別れたよって報告してくれたこと、一生忘れません。
一緒に行った横浜旅行、一生忘れません。
たくさんされたひどいことも、一生忘れません。
最後に会った初詣の日のデート、一生忘れません。
さよなら。